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残り火2nd stage 第1章:今までで一番、熱い夏!5

ผู้เขียน: 相沢蒼依
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-10-08 14:09:37

***

 明日、列車で穂高さんがいる島に向かう――夏の日差しを浴びて、きっと日焼けしてるんだろうなぁ。

 更にカッコよくなっているであろう彼のことを考えるだけで、顔の筋肉がつい緩んでしまい……。

「いかん、いかん。仕事中なのに」

 明日が楽しみすぎてぼんやりする時間があると、いつの間にか穂高さんのことを考えてしまった。

(列車の中で、きっと居眠りしちゃうだろうな。宅呑みが盛り上がったせいで、仮眠が少ししか取れなかったし)

 コンビニで働く仲のいい友人と親睦を深めようと、月一でそれぞれの家を回り、宅呑みしてみないかという提案をしてみた。言いだしっぺの家が最初だって他のふたりが指摘したのだけれど、夏休みは丸々こっちにいないと言ったら急遽、昨日を来月分の前倒しとして俺の家で行うことになったんだ。

 昨夜の宅呑みの疲れを引きずってるからといって、仕事の手を抜くわけにはいかない。稼ぎ時の夏休みのシフトに、穴を開けているから尚更――

 頭を振って、新商品の棚の整理に勤しむ。こうして集中していたお蔭で、気がついたら仕事上がりの時間になっていた。

「お疲れ様でした!」

 次のシフトの人に引継ぎをしっかりしてから、急いで自宅に帰る。少しでも睡眠をとって、穂高さんに心配かけさせないようにしなければ。こういう体の変化に敏感な恋人のことを考えているうちに、帰路に着いた。

 ウキウキしながらカバンから鍵を取り出し、鍵穴に差し込もうとしたそのときだった。目の端に人影を捉えた一瞬の隙に、大きな手が俺の口を塞ぐ。それと同時に、太い腕によって体を抱きしめられてしまう。

「んぐっ!?」

「騒がないでくれ……。そのまま、家の鍵を開けてくれないか」

 心に染み込むような低い声――聞き覚えのあるその声の持ち主は、ひとりしかいない。

 振り返ってその人を確認したいのに、口を塞いでる手が見事にそれを邪魔した。それだけじゃなく背中から伝わってくるその人の存在が、俺を更に混乱させる。

 汗ばんだ体温が、じわりと身体の中に侵食していくみたいに感じた。

 鍵を持つ手がわなわなと自然と震えてしまって、上手く開けることができないよ。

「どうしたんだい千秋。もしかして、俺を焦らしてるのかい?」

 ふっと笑った感じが伝わったと思ったら、髪にキスを落とす。

「ね、早く鍵を開けてくれないか? ずっと君を待っていたせいで、自制が利かないんだ。このままこの場で、イヤがることをしそうなんだが」

 言いながら身体に回している腕が緩められ、なぞるように脇腹からするすると手が、下半身に向かって下ろされていった。

「うぅっ!!」

 これ以上はマズいと反射的に考え、慌てて鍵を差し込み、カチャッと音を立てて開けたというのに、俺に覆いかぶさるように身体を密着させて、耳朶を口に含む。

「ンン、んぅっ」

「ほら、次は扉を開けてごらん」

 わざと吐息をかけながら言うから動きたくても上手く動けなくて、やっとという感じで扉を開けることに成功した。

 穂高さんを背負った形で玄関に入ると、ふっといきなり解放された身体。だけど呆気なく、直ぐに捕まってしまった。肩を掴まれて壁際に押しつけると、呼吸を奪うようなキスで俺の動きをきっちり封じる。

(――何で、ここにいるんだ!?)

 いろんな質問が頭の中を流れているというのに、それを言わさない勢いで顔の角度を変えながら、俺をどんどん翻弄していく。

「うぅん、っ……あ――」

 離れていた距離を、まるで埋めているみたい。嬉しすぎて涙が出そうだよ。

「千秋、逢いたかった。ずっと」

 暗闇の中、吐息とともにくちびるの先で囁かれたけど、どんな顔をして言ってるのか暗くて見えないのに、それが想像ついてしまう。印象的な瞳を細めながら、俺のことを見つめているんだろうな。きっと――。

 それを確かめたくて玄関の電気をつけるべく片腕を伸ばし、唐突に明かりをつけたら、ぎゅっとその腕を掴まれてしまった。

「逃げないでくれ」

「違っ、ただ電気をつけただけだよ。穂高さんの顔を見たかったんだ」

 鼻先で待機してる穂高さんは近すぎて、正直ハッキリとは見えなかったけど彼の存在を――体温を間近に感じることができて、微笑まずにはいられない。

 掴まれている腕を動かし、そっと彼の頬に触れてあげた。

「俺の顔を見たって、そんなに変わっていないよ。見飽きてるんじゃないかい?」

「見飽きるなんてそんな。それに離れているからこそ、ちょっとした変化に気がつく自信はありますけどね」

「へぇ。どこら辺が変わったのか、教えてくれないか?」

 そう聞いてきたクセに俺に答えを言わせない勢いで、くちびるを塞ぐ穂高さん。しかも腰をグイグイ押しつけて、ここぞとばかりにアピールしちゃうとか信じられない。

 困り果てる俺を他所に頬に触れていた手を自分の首にかけさせて、更に身体を密着させてきた。

 こんな場所で追い討ちをかけられて、心の準備なんてできるハズもなく、ただ翻弄する彼に対して文句のひとつくらいは言いたい。

 それなのに口を開かせないようにするためなのか、首筋をなぞるようにくちびるが下ろされていく。

「やめ、っ、ほ、だかさ――ンン、あっ……」

 下ろされていたくちびるが途中で止まって、方向転換。正面に頭が移動して、優しく喉仏を食む。食みながらぺろぺろと音を立てて舐められてしまい、くすぐったくて堪らなくなる。

「ゃっ、も、ダメ……お願いだ、からそ、れ以上、は……っ」

「イヤだね。お預け食らった分、堪能させてもらう」

(お預け食らった分って――ちょっと待て! 今まで離れていた分を、ここで堪能しようとしているのか!?)

 穂高さんのセリフに固まる俺を無視して、肩に置かれていた片手がTシャツの裾を捲った。くちびるはゆっくりと下から上へ、線を描くように上っていき耳元に到着する。

「あんまり可愛い声をあげていたら、外に聞こえてしまうかもね。千秋の声は、思った以上によく響くから」

 喉の奥で低く笑いながら告げられる言葉に、身体がぶわっと熱くなった。

「だったらこんなトコで、そんなこと……止めて、くださぃ」

 止めてと言ってる傍から、裾から入り込んだ手がウエストをゆっくりと撫でていく。

 間違いなくこのまま放置していたら、この手は上へと這わされてしまうであろう。穂高さんの首に回してる手を外して、動きを阻止すべく動いている手首を掴んでやる。

「この手を止める権利、君にはないんだよ千秋。丸一日ガマンした、俺を褒めてほしいくらいなんだからね」

「丸一日って、えっ!? もしかして、昨日から来ていたの?」

 驚く俺の表情とは対照的に、ムッとした顔する。

「ん……。コンビニの前で出待ちしていたら、仲良くしている例のコンビニ店員と一緒に出てきたのを見て、軽くショックを受けた。しかも千秋はデレデレした顔で実に美味しそうに、ヤツから手渡されたジュースを飲んでいたね」

(あのとき後ろに人の気配を感じたのは、錯覚じゃなかったんだ――)

「もしかして、猫の変な鳴き声を出したのって。……穂高さんだったりする?」

 笑いを堪えながら言ってやると、ますます憮然とした表情を浮かべた。だってあの声って正直ネコというよりも、カエルを踏み潰してしまったような声に聞こえてしまったんだ。

「だって、あの場はそれで、しのぐことしかできなくて」

 耳まで赤くした穂高さんが、珍しく俺から顔を背ける。うわぁ、貴重な瞬間!

「ねぇねぇ、もう一度鳴いてみてくださいよ。傍で聞いてみたいなぁ」

 そっぽを向いたままの穂高さんの頬に、ちゅっとキスをしてあげた。照れたままでいる彼の目元は、相変わらず赤い状態ですごく可愛い。

「何を言ってるんだ、まったく。おねだりするモノが違うだろ、ほら」

 Tシャツの中で止めていた手が中から出てきて、穂高さんの手首を掴んでる俺の手を強引に引き剥がし、逃がさない勢いで手首をぎゅっと掴まれてしまった。

 この後に何をするのか予想ができたからこそ腕に力を入れて、それを阻止しようとしたのに、呆気なく力でねじ伏せられて、穂高さんの下半身に触れさせられてしまう。

「コレが今すぐ欲しいんです、ちょうだい穂高さんって言えたら、ネコの鳴き真似をしてあげるよ」

 恥ずかしがり屋の俺が言えないであろう言葉をわざわざ選ぶあたりは、本当に策士としか言いようがない。だけど俺だって、ちょっとは成長してるんだぞ!

 恥らう顔をしながら(勿論、演技だよ演技!)下半身に触れている手にそっと力を入れて、刺激をしてあげた。反対の手で穂高さんの首を引き寄せて、形のいい耳元にくちびるを寄せる。

「穂高さんの全部が、今すぐに欲しいです。早くちょうだい……」

 顔を突き合せなければ、これくらいのセリフが言える。だからもっとすごいことだって、思いっきり吐き捨てられるかもしれない。

 おねだりに成功して、ほくそ笑みを浮かべた俺を、一瞬だけ眉を上げて驚いた表情を見せた穂高さん。だけどすぐに妖艶な笑みを口元に湛えたと思ったら、俺の顔が逃げられないくらいの位置にわざわざ顔を寄せて、なぜかスタンバった。

「さっきのは、空耳だったのかもしれないね。千秋の声を真似した可愛い妖精か何かが、俺の耳元で何か囁いたらしい」

「は?」

「今度は俺の目を見ながら、それを言ってほしいな。しっかり聞きとれる大きな声で」

 ちゃんと言ったのに、何だよこのワガママは!?

「俺は、穂高さんが要求するとおりに言いましたよ。そんなのズルいですって」

「だからさっきのは、妖精か何かが言ったんだと思って。姿が見えなかったからね。( ̄∀ ̄*)イヒッ」

 イヒッじゃない、何だよその得意げな顔は。そんなに、ネコの鳴き真似をしたくないっていうのか!?

 呆れて口をパクパクさせる俺を見下ろし、言えないのかいと更に催促までする始末。

「いっ、言えますよ……」

「ん?」

 鼻先まで顔が近づいているというのにくちびるが触れそうな位置まで、ぐっと顔を寄せてきた。

「……近すぎますって」

 逃げたくても後ろが壁なので、逃げようのない状況下に置かれる。穂高さんの体温や吐息が嫌でも伝わってくるので、本当に落ち着かない。俺を困らせることに関しては、天下一品なんだから。

「早く言わないと俺の全部を使って、千秋に感じさせるコトをこの場でいたしちゃうかもね」

 言い終えない内に舌先を使って、くちびるをぺろりと舐める。

「んぅっ……ぁあ」

 嫌がらせの次は感じさせることって、結局穂高さんが喜ぶことを進んでしているだけじゃないか。俺の要求を、まるっと無視してくれちゃって。

「もう嫌だっ、止めてくださいよ。いい加減に!」

 怒りが頂点に達した俺は穂高さんの身体を思い切り突き飛ばしてから、家の中に入ってやった。

 久しぶりに逢えたというのに、ワガママばっかり押しつけるなんて酷い。久しぶりだからこそ俺のワガママくらい、聞いてくれても良さそうなのに。

 部屋の電気を点けて台所に行き、渇いた喉を潤そうと歩き出したときだった。

「もう嫌だ、ね――。だったらその言葉を変えさせてあげようか、千秋」

 怒りまくってる俺の背中に低い声が届いた瞬間、ぎゅぅっと抱きしめられてしまう。

「ちょっ、な、何っ!?」

 ビックリしながら振り向くと、顔のすぐ傍でほくそ笑む穂高さんがいた。その笑みがアヤシすぎて、怖いくらいだ。

「もうイイっ、堪らないよ穂高さんって言わせてあげる。だから覚悟してくれ」

 飢えた獣のような瞳に見つめられて、身体がフリーズする。ヤバいと思ったときには既に遅く、無造作にその場に押し倒されてしまった。

「あっ、はぁっ……穂高さ……ん……ぅ!」

「さっきの言葉を言うまで、絶対に離さないよ千秋。止めてあげない」

「はぁう…… ひっ……あっ、あっ、いきな、り、どこさわ、あっ、ひゃっ……やめっ――」

 互いの維持とプライドがぶつかりつつも、最後には宣言通りの言葉を言わされ、結局折れてしまった。もう少しだけ、感動の再会を分かち合いたかったのになぁ。

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